試しに1週間

こんにちは、ランマニアです。

4月に入ってダニエルズさんの体力向上プログラムに挑戦し、はや1週間。

今日の120分Eランニングでちょうどひと回りになりました。

当初このプログラムを始めるにあたり少し怖気付いていたのは、

restが1日しかない

400m×10の疲労度が想像できない

レぺや閾値走翌日がrestではない

一番疲労が溜まってそうなタイミングで120分ジョグがある

などなど。

ランマニア的に、ここまで詰めたスケジュールで練習を通したことはここ数年なく、できるだけ疲労を残さないことだけを考えてきただけに、この頻度で練習することに幾ばくかの抵抗がありました

特にレペと閾値走の翌日に練習が入っていることが、ランマニア的にはかなり厳しいと感じました。

しかし、とにかくまずはやってみなければ次のステージには進めないわけですから、この1週間はとりあえずできるところまでやってみようと、手始めにスケジュール通りに練習を継続してみました。

最初の難関は、予想通り400m×10の日にやってきました

インターバルだろうがレペだろうが、この手の練習はもう10年か下手をすると20年近くやっていなかったので、どれだけ体に堪えるか想像もできませんでしたが、案の定、これをやった日の夜は「食事ができないほど」疲労困憊でした。いやこれはキツかった。

その日はもう何もせずすぐに寝ました。というか、何もできませんでした。

翌日も脚は相当重く、正直休んでしまおうかと思ったほどでしたが、とにかく1週間は続けると決めていたので、キロ何分かかろうが60分は走ることにしました。

しかし、この日のジョグを相当抑えたペース(キロ5分50秒くらいだったと思います)で行い、さらにその翌日もrestだったこともあり、次の閾値走20分の日を迎える際には、なんとか通常の練習ができるほどまで回復させることができました。

この閾値走も、若干ペースは落ちましたが最低限の強度は確保して終えることができました。正直、この400mから閾値走までの流れは無理だと思っていたので少々意外でした。

さて、ここまで中二日でレペと閾値走が入った後で、さらに60分、120分Eジョグが待っていますこのスケジュールも正直しんどいな、と。

そこで、この最後の二日のジョグは思い切ってペースを抑えました。本来のランマニアのEペースはキロ4分台ですが、そんなペースで2時間も走ったら来週からもうこの練習は続けられないと思い、自分の足が勝手に進むまま(つまり出力0)、それ以上のペースアップは行わないことを決めて、決められた時間を走ることにしました。

結果、今日の120分ジョグまで全て忠実にメニューをこなしてみましたが、とりあえず今日の段階では明日以降もこのスケジュールを維持できそうな感覚はあります。

ここまでこの練習を継続でき、さらに一定の疲労を溜めずに済んだ要因は、

ジョグの日は極力出力を抑える

ペースが速かったり距離が長かったりした日は、しっかり食べてすぐに寝る

レペと閾値走は設定ペースを超えない

この辺りだったのではないかと推測します。

実際のところ、実は思ったよりも脚にはきていません。もっとパンパンガチガチになるかと思っていましたが、そこまででなく、やはりメインは神経系の疲労眠気やかったるさです。これは今のところ、とにかく睡眠でカバーするしかないかなと思っています。

練習でできないことでも本番ではできる

こんにちは、ランマニアです。

本来ならこの時期はレースも頻繁にあり、それについての話題や感じたことなどをどんどん書いていければよかったのですが、こんな状況になってしまうと、下手をすると「ランマニアの練習日記」みたいなとてもつまらない内容の繰り返しになりそうで、正直頭を悩ませています。

そんな中でもTwitterは話題の宝庫で、毎日のようにああだこうだ議論を重ねられるのは大変参考になります。

さて、今日の話題もTwitterがきっかけで思い出した学生時代の思い出。

ランマニアは、中学から陸上を始め、以来この年までずっと「競技として」続けているのですが、高校時代から大学までが体を壊さず最も練習が充実していた時期だったのですね。

高校も大学も、トレーニングの負荷や強度は今よりも格段に高く、週にインターバル、ペース走、レぺ、ロングジョグなど、ほとんどのタイプの練習が組み込まれていて、今では考えられない練習をしていました。

当然、試合のない時期は調整をする必要がないので、とにかくいつも脚の疲れは多少なりとも残った状態で練習を継続することになるのですね。

そうすると、もう毎回の練習でムキになって走ることなど無理なわけで、とにかくランマニアが通常の練習で意識していたのは「本気を出さない」ということでした。

練習中は常に頭の中に「いざとなれば休養を入れて、本気を出せばこれくらいで走れるから」という目安のようなものがあり、「調整もしていない練習なのだから、これくらいで走っていればいいんだよ」的なことを考えて練習をこなしていたのを覚えています。

当時はまだ、「練習でできないことは本番でもできない」的な指導が多くまかり通っていて(幸いランマニアの周辺にはそういう人はいませんでしたが)、そういう話を聞くたびに「なわけないだろ」と高校生の分際で生意気に思っていたわけですね。

いくら「勘違い高校生」のランマニアでも、試合前は練習量を落として調整し、それにより本番はだいぶ脚が軽くなることくらいは経験上理解していましたし、試合当日はかなり緊張して「体感的にも脚が軽くなる」こともうすうす気づいていました。

ですから、試合当日のコンディションは、そうでない時の練習時に比べ遥かに良好で、むしろ「試合でできないことは練習でもできない」くらいに思っていたのですね。

結局、大学に入ってもその考えは常に頭にあり、先輩や仲間からはよく「なんで練習であんなに死んでんのに試合でこんなに速く走れんだよ」とよく言われたものです。「本番に強いランマニア」とかも言われましたが、いやいやそんなの当然でしょ、試合は調整するんだから、といつも思ってましたね。

これは長距離に限らず、他のスポーツでも同じだと思うのですが、トレーニングを行えば当然疲労して、一時的にパフォーマンスが十分発揮できない状態になるわけですね。その疲れをとって筋や神経系を回復させ、その状態を維持して試合当日を迎えると思うのです。

その原理を理解していれば、「練習で出来ないことは、云々」な話にはならないと思うのですが、まあとにかく当時は真夏の炎天下の中「水を飲むな」で200m×10とかをやらされていた時代でしたから(ランマニアは人生で唯一、中1の時のみ顧問が決めたメニューを行なっていました)、そういうことは日本の「部活」文化にも浸透しやすい考え方だったのでしょうね。

400m×10

こんにちは、ランマニアです。

さて、昨日の今日で迎えた400m×10レペティション。

そもそも400mを10本など、最後にやったのは思い出せないほど遥か昔にやって以来。ランマニアの体調であれば、到底やり切ることは不可能と思っていました。

ダニエルズさんによれば、レペティションは無酸素性作業能やスピードなどを養うためのもので、1本1本しっかり休んでからやりなさい、とのことです。

最大酸素摂取量を高めるための練習であれば、1本1本のペースを抑える代わりに、インターバル(間の繋ぎ)を短めにして、心拍ゾーンを維持することを目的にします。

一方、今回のレペティションは1本1本をできるだけリフレッシュした状態で行い疾走ペースを上げ無酸素性代謝をしっかり使いランニングフォームも崩れないように走ることを目的にしています。

なので、ランマニアも、つなぎのインターバルはかなりゆっくりとしたジョグで疲労を回復させ、走ってきた400mの帰りを3分以上かけて戻りました。

いつも練習しているコースで、最も長い直線の取れるところは、若干の傾斜があります。

また、上り方向へ走ると若干向かい風になるため、その方向へ走るとかなり負荷が高くなってしまいます

ともあれ、まずはどのくらいの負荷がかかるかこの方向で走って試してみました。

一本目はそこそこ足もフレッシュな状態だったためか71秒。

ランマニアのRペースは71秒なので、やや上りの向かい風としてはちょっと速すぎます

二本目は抑えすぎて76秒もかかってしまいましたが、その後は72秒くらいでは走れたものの、四本目過ぎから脚の状態がちょっとこれでは10本は難しいと感じ、五本を終えたところから、逆方向(やや下り、追い風)で走ることにしました

逆方向は、明らかに体感できるほどペースの維持は楽で、これまでかなり上り坂と向かい風で消耗してしまったことに気づきました。

ただ、比較的力まずにリラックスしてペースを維持して走っているうちに、最初の5本の疲れが少し抜けた気がして、最後の下り5本はいずれも無駄な力を使うことなく軽快に行うことができました。(67〜69秒)

始める前は、10本など到底無理だと思っていましたが、1本1本の間隔を開け、しっかりリセットした状態で走り続ければ、全くできない練習ではないことに気づきました。

しかも、冷静に考えて400m71秒というのは、1000mでだいたい2分57秒くらいのペースです。感覚的には「キロ3よりちょっと速いくらい」ですので、それほど全速力で走る必要はありません(むしろそのペースでは今回の練習の目的が達成できません)。

なので、1000mを3分で走るくらいのつもりで走り始め、出力的には13〜15くらい(20はガムシャラ走りでフォームは維持できない)で継続しました。

結果、10本目まである程度余力を残してやり遂げることができました。

ただし、帰宅した後の疲労度はちょっとまずい感じです。

ここまで疲労が出てしまうと、明日以降予定通りの練習は難しいかもしれません。

筋肉的には問題ないのですが、神経系(特に中枢系)の疲れ方が思った以上でした。

昨日の75分に続いて400mを10本というところまではなんとかこなせましたが、ランマニアの体調的には、今後の計画は再考する必要があるかもしれませんね。

二日酔いしない走り方

こんにちは、ランマニアです。

ランマニアは若い頃からお酒が弱く、学生時代は散々飲まされ結構辛い思いをしました。

しかし社会人になり、自身の判断で飲酒を選択できるようになってからは、ほとんどお酒を飲まなくなりました

ですから、そんなランマニアがお酒を語るなんてもってのほかなのですが、今日は走りながらぴったりな表現が見つかってしまったので、そのお話を。

ランマニアは、今月から少し長い期間を通して、ダニエルズさんの体力向上プログラムに取り組んでいこうと考えています。

このプログラムは、ある特定の種目に対するトレーニングではなく、今後様々な種目のトレーニングを積んでいけるように、その練習に耐えうる基礎的な力を高めるトレーニングです。

なので、そこそこの距離は踏むし、スケジュール的にしんどい部分も少なからずあるわけですね。

例えば、今日75分のEランニングを行った後、翌日は400mをRペースで10本とかなわけです。これ、正直「まじか」と思いますよね。

疲労に細心の注意を払わねばならないランマニアにとって、そこそこ長めのジョグの翌日にさらにスプリント系の練習ですから、この「2連コンボ」は非常に危険です。

そこで、今日の75分は、本来の目的からは外れてしまうかもしれませんが、かなりペースを抑えて走ってみました。いつもの「出力0」というやつです。

本来ランマニアのEペースはキロ4分40秒弱と、結構いいペースです(シャレではなく)。これはそこそこ調子が良くなければ維持できないペースですし、こんなペースで75分も走れば、翌日はかなり疲労が残ります

次の日も大事なスプリント系の練習が控えてますから、いわゆる「二日酔い」の状態はなんとしても避けなければなりません

そうなんです。今日の練習は、明日の練習を考えて「控えめ」にしなければならないということです。

ランマニアは、二日酔いの経験がほとんどないので、どういう感覚かよくわかりませんが、まあとにかく「翌日に残してはいけない」のですね、疲れを。

このように、練習のスケジュールが、ランマニア的にしんどそうな時は、ペースや強度抑えて取り組む工夫が必要だと思っています。それは、3月の練習がまさにそうでした。

明日朝起きて、どんな状態かわかりませんが、もし順調に回復して(しっかり酒が抜けて)高い強度の練習ができそうな状態であれば、今日の練習はひとまず成功。

もし思ったよりも疲れてしまっていたら、ちょっとやり過ぎだった(飲み過ぎだった)、ということになります。

たまには靴の話でも(後編)

こんにちは、ランマニアです。

前回の続きで、ランマニアがようやく自分にぴったりの靴を見つけた話。

今からもう10年以上前になりますか、アディゼロジャパンが登場したのは。

だいぶ昔のことなので記憶が定かではないですが、確かあの靴は、皇帝ゲブレシラシエが履いて世界記録かなんかを出した靴で、相当彼のフィードバックを受けて作られた靴だったとのことでした。

なんでも、「かかとをもう少し厚くしてくれ」と注文してその通りに作ったら、「結局一度もかかとをつかずにフルを走り切っていた」とか言うほんとかどうかわからない逸話がありましたね。

まあ、そんな衝撃的なデビューを果たした靴でしたが、ランマニアがあれを履いた瞬間に受けた衝撃はいまだに覚えています。

何が驚いたって、履いた瞬間「自分のために作られた」としか思えないくらい足にフィットしてしまったんですね、まさか。

それまでは(いやその後も)、たいてい靴を新調すれば、自分のサイズ通りの靴でさえ、「足の甲がきつい」だの「つま先が余る」だの「長さはいいけど幅が狭い」だの、まあ色々な不満はあるわけです。

ところが、この靴はまるで「靴下」を履いたかのようにぴったりと自分の足にハマり、どんなスピードで走っても靴の中で足がストレスを感じない、魔法のような履き心地だったんですね。こりゃたまげました。

そして、そこそこのクッション性と、適度な硬さ(ランマニアは、比較的ソウルの硬い靴を好みます。接地時に姿勢が崩れず、力がダイレクトに伝わる感覚があるからです。)、さらにはスピードシューズ並みの軽さ、それらを全て兼ねそなえたスーパーシューズだったわけです。

ランマニア的には、実はもう少しかかとが薄くてもよかったと思うのですが、そこは皇帝の「お考え」ですから素直に受け入れ、この靴で、ジョグからインターバル、そしてフルのレースまで全てをこなしていました。

数年前、この「皇帝モデル」は一時復刻され、あの「元祖」でなければダメなランナーたちの手に渡りましたが、現在ではすべてブースト化してしまい、残念ながらあの適度な硬さのジャパンを手にするすべはなくなりました。ランマニア的にも、ブーストフォームは足には優しいのですが、接地の時点で若干姿勢が崩れる感覚と膝下の「粘り気」を感じることで、やはり初代モデルが白眉だったなと思うわけです。

とはいえ、ランマニアにとってこの靴はオールマイティーなシーンで活躍できる靴であることから、もう10年以上、ブーストも含めジャパンオンリーでランニング生活を送ってきました

さて、そんなジャパン愛に溢れたランマニアですが、実は今年1月、この10年で初めて他のシューズに手を出しました

それが、同じアディダスの、アディゼロRCというモデルです。

ソウルの厚さはこれくらいが理想

マニアの方はご存知だと思いますが、このRCは、かつてはアディダスのレースモデルだったのですが、Takumi 戦シリーズの台頭で、こちらはいわゆる「部活用」廉価モデルに降格してしまったシューズです。

しかし先月、ちょっと良さげなソウルの薄さと「あまりの安さ」に惹かれ10数年ぶりに新しい靴に手を出したのですね。アマゾンさんでヨンキュッパですよ。

そしてこのRC、とにかく全てがまあ硬いソウルも硬ければアッパー部も硬く、買って数日は足の甲が痛くてしょうがないほど。足裏も直接アスファルトを踏んでるんじゃないかというほど硬い。やっぱり安物だー、と買ってすぐは激しく後悔したものでした

ところがですね、この靴、「慣らし運転」が必要だったのです。

練習で履いて、100kmくらい走った頃でしょうか。なんだか最初の硬さが消え、だいぶ足の自由度が高まり、接地から蹴り出しまで非常に足の甲が自由に動く感じになってきたんですね。

そして、ソウルの硬さにも次第に慣れ、むしろその軽さの恩恵を十分に受けることができ、非常に軽快に走れるようになってきたのです。

みなさんご存知の通り、回転運動では回転の中心から遠くにある部分には遠心力がかかります。そして、この部分に重さがかかると、遠心力がさらに増加し非常に大きい外側への力がかかるのですね。

走行中の足の動きもまさにこの回転運動。回転の中心は膝や腰ですから、靴を履いている「足」は最も遠い場所になります。その部分が重くなればこの回転力はより鈍くなっていくのです。

そんなこともあり、このRCの軽さのメリットはランマニア的にはかなり重要な要素だったのですね。

しかし、そうは言ってもやはりこの靴は「硬い」衝撃がものすごい。このままこの靴を履き続け、4月からの走行距離延長を目指すのは、ちょっと危険な気がしたのです。

そこで、再びのジャパンブーストへの回帰

久しぶりに履いてみて、やはり安定のクッション性ストレスのない履き心地接地した瞬間の安心感。これらはRCにはない数々のメリットですね。

さて、またしばらくはこのアディゼロジャパンにお世話になるのですが、世の中は厚底一色です。いまだにこんな靴で渡り合おうとしているランナーなんて、ランマニアくらいなものです(実際1、2月の駅伝でTakumiSen を履いていたのは私だけでした)。

そろそろ厚底へ移行しようと思ってはいるのですがね。

たまには靴の話でも(前編)

こんにちは。3日間、ランニングもブログも休養したランマニアです。

ランマニアは昨年9月ごろ、7月8月に練習を無理に無理して(と言っても多くの人にとってはたいした練習ではないのですが)続けた結果、一月くらい疲れが抜けなくなってしまった経験をしました。

3年前にフルマラソンで自己ベストを出してから、もうワンランク走力を上げるには、練習の負荷も上げなければならない、と必死になり、無理を重ねてしまったのですね。

その反省から、10月以降決して無理をしないよう、自分の疲れ具合に応じて練習を続けてきて、ようやく先月、ポイント練をまともにこなせるようにまで戻ってきたのでした。

そう言う経験があり、この3月は比較的良い状態を維持できたからこそ、思い切って少しまとまった休みを入れてみたのです。

この休みの効果は、経験上すぐには現れず、ここから練習を漸次的に上げていく中で徐々に調子が戻ってくると予想しています。

さて話は変わって、ランマニアはこの4月から靴を変えてみました。(変えたと言うか、元に戻しました。)

ランマニアは、もともとあまり靴に詳しくなく、多くの知り合いのランナーのように、練習によって靴を変えたり、新製品を試したりしないタイプです。

いえ、以前はそうではありませんでした

高校から大学までは、アップ用、スピード練用、レース用、スパイク、などと、数種類のシューズを使い分け、それぞれの用途によってしっかりと靴を用意していました。

しかし、体調を壊してからはほぼポイント練ができなくなってしまったので、基本のジョグシューズだけあれば事足りてしまうことが多く、たまのスピード練もそのジョグシューズでこなしてしまうようになっていたのですね。

そんな事情もあり、アップシューズとスピードシューズを使い分ける必要がなくなったため、ちょうど「中間」あたりの靴へのニーズが年々高まってきました。

しかし、ランマニアが社会人になった頃は、今のようにマラソンブームなどまだなく、「長距離走」に取り組む人は、学生や実業団のようなシリアスなランナーか、健康目的の市民ランナーくらいで、今ではごまんといる「競技志向市民ランナー」など、当時そのへんで見かけることなど到底あり得ませんでした

そんな状況でしたから、当然靴のニーズも「一部のエリートランナー向け」「ジョガー向け」がほとんどで、ちょうどその中間あたりのシューズなどニッチすぎてどのメーカーからも販売されていませんでした。

具体的にどんな靴を求めていたかと言うと、「ジョグを軽やかに走れつつ、クッション性も高い靴。」「クッション性もそこそこあるけど、インターバルも意外といける靴。」と言う、非常に「わがまま仕様」でした。

少しマニアックな話をすると、当時のアシックスで言うと、スカイセンサーだと重すぎて、ターサーだと少しクッションが弱い。ナイキで言うと、ペガサスだと重すぎて、エアズームケイジ系だとジョグには不安定(このケイジ系は足底腱膜炎を発症すると言う致命的な相性の悪さがありました)、と言った具合です。

これは当時当然の悩みで、高校時代のランマニアは、アップはナイキエアペガサス、スピード練はニューバランスのコンプ系、レースはアシックスのマラソンソーティー、と、まあ贅沢なラインナップで練習をしていたので、そんな細かいニーズを一つにまとめる靴など、あろうはずもなかったのです。

しかし、そんな我々マニアックランナーのニーズに応える革新的なシューズが登場することになります

2008年初夏、あのナイキから「ビクトリー」と言うこれまでの範疇にはなかったものすごい靴が登場します。(今のビクトリーはスパイク銘柄になってますかね)

このビクトリーが凄かったのは、とにかくレースシューズかと思うようなその軽さアッパー部の素材に工夫が凝らされ、ソウルの重さをアッパー部で相殺していたのですね。

そして何より我々のニーズに最も応えてくれていたのが、なんと前足部に薄い「エア」が内蔵されていたことでした。

当時はまだ、「フォアフット」などと言う言葉がなかった時代(あったかも知れませんが、一般には流布していなかった)。しかし、学生からスピード練をガンガンやってたランナーにとって前足部から接地するのは当たり前のことでしたから、「なぜかかとばかりにエアを入れたりクッション性を持たせたりするのか」と常に不満を抱いていました。

そんな中で、しっかりと前足部にクッション性を持たせ、かつ軽量化も両立できているこのビクトリーは、まさに我々が望んでいた「最強のランニングシューズ」だったわけです。

さらに、この靴の凄かったのは、ソウルのかかと部分が若干厚めに作られ、走り出すと勝手に前傾姿勢が生まれると言う革新性も備えていたことでした。

そんなパーフェクトなシューズでしたから、もうランマニアはこの靴だけを買い替えながら、ロングジョグからインターバルまで全てこれ一足でこなしました。いや、こなせてしまいました。

しかし、このビクトリーは、唯一にして最大の欠点が存在していました。

それは、軽量化のためのアッパー素材に柔軟性がほとんどなく、「確実に靴擦れする」と言う恐ろしい事実が判明したのです。

これはランマニアだけでなく、知り合いのランナーにも発生し、ネット上でもその情報は散見されていたので、もうほぼ確実に技術的な欠陥だったのでしょう。

そして、こうした欠陥とマニアすぎる設定のためか、このビクトリーも数年で廃盤になってしまいました。マニアックなシューズは売れないのです

そんなビクトリー亡き後、ついにランマニアにとって運命のシューズとも呼べるこのシューズが登場します。

アディダス アディゼロジャパン。

個人的にはブーストなしモデルの方が好き

後編へ続く。