走らせてくれない靴を履くことで「自分で走る力」を身につけることができるのかもしれない

こんにちは、ランマニアです。

昨日から今朝は5時起きで走るぞ、と少し早めに布団に入ったのですが、まさかの緊急地震速報で強制起動させられ、なんだか寝たような寝てないような浅い眠りのまま朝を迎えて練習開始となったのですね。

今朝は久しぶりに眠いままの出走となり、気が向かないままとぼとぼと練習場所の公園までの4.8kmをアップ(ダニエルズさんのメニューでも4.8kmEとなっており、玄関を出て練習場へ向かうまでの道のりを兼ねることができるので非常に効率がいい)。

朝の5時半では外は真っ暗ですし、公園にもほとんど人気はなく。

そんな中自分でも「よくやるな」と思いながらも、今日のメニューは22km以上の距離走なのでできるだけ早い時間帯に終わらせたかったというのがあります。

ジョグシューでMペースを体験してみる

さて、ずっと足を痛めていたので今日のような距離走も当然久しぶりのことで、とにかくペースを上げられる気は全くしなかったので、今日の目標は「ゆっくりでもいいから完走」ということになりました。

さらに、もうほとんど脚の状態は大丈夫とはいえ、20kmもの距離をキロ4前後で走るには若干の不安があり、いつものボストン8でその距離を走り通すのはなんとなくまだ怖さを感じたのですね。

そこで、以前から一度は試したかったサロモンのSONIC RA PRO2でMペースは維持できるのかどうか(もっといえばフルのレースに使えるかどうか)を試すにはちょうどいい機会だと思い、初めてジョグシューで距離走をやってみることにしました。

メーカーサイトでは一応レースシューズ扱いですが、まだジョグにしか使ったことがないSONIC RA PRO 2

軽いのに軽くないシューズ

このRA PROシリーズ、サロモンのサイトでは一応レース用を謳ってはいるものの、履いた感じではどう考えてもジョグ用。頑張ってもマラソンペース程度(だからそのペースのレース用、という意味か?)がいいところかな、という印象です。

しかし、メーカーがレース用をアピールするにはそれなりの理由もあり、なんと言ってもこのシューズの特徴は、その見た目からは想像もできない軽さにあります。

見た目はジョグシューなのに、驚きの210g!(26.5cm)

なんとまさかのボストン8よりも25gほど軽量なのですよこのRA PRO2は。

軽いと思っていたボストン8でもこの重量。(27cm)

しかし、実際履いてみるとこの重量差を全く感じないほど「重く」感じたのが今回のRA PRO2。

いえ、もちろん走行中の25gなんて実際に感じられるようなレベルでもなく、今日のようなMペースなんかでは全く影響を及ぼしもしない差なんですが、正直もっと軽やかに走れる印象を持っていたのですね。

実際に手に取るとものすごく軽いので・・・。

スタートしてMペースを維持しようと思い、若干フォア気味で接地をしてスピードを出そうとするのですが、なんだか軽くないぞこの靴。

初めは体が動かないためキロ4分30秒もかかりましたが、その後動きが良くなってきてもなかなかキロ4が切れず。

靴のせいにしたくはないですが、これがボストン8よりも軽いというのはにわかに信じがたい。

そんな気にさせられました。

恐ろしくスピードが出ない「レースシューズ」

走りながら「この重さ」はなんなのだろう、とずっと考えていたところ、接地のたびに感じるある違和感に気がつきました。

この「レースシューズ」、レースシューズなのに、全然スピードが出ないんです。

いやいやいやいや、それはお前の足が遅いんだろう、と突っ込みたくなりますよね。

はい、もちろんそれは認めるのですが、接地した際になんというか地面を蹴って推進力が得られないのです。

全然進まない。

これまでMペース以上のスピードで走るときに履いていた、アディゼロのボストンやあの悪名高いジャパン5ですら接地して蹴り上げる際にはバネのように弾む感覚が得られたものですが、この靴は本当に進まない。

こんな靴が世の中に存在していたのか、と驚きを禁じ得ませんでした(いやかなり失礼。でもこの後ちゃんとフォローしますので)。

衝撃を吸収しすぎて反発が得られない「Vibe」フォーム

しかしこの靴、ある強力な利点も存在しているのです。

Mペースのようなフォア気味の着地でスピードを出そうとすると足裏のフィードバックがうまく感じ取れないのですが、少しペースを落とすと他のシューズでは感じられない明らかに高いクッション性能が発揮されているのですね。

特に、多くのスピードシューズでは両立し得ないほどの前足部のクッション性能が(厚底さんたちとは比較できませんが)。

なので、結果から先に言うと、今日の練習では20km以上Mペースで走ってみて初めて足裏が一度も痛くなりませんでした。

これはボストン8では一度も体験したことがなく、もっと短い16kmくらいでも若干足裏の筋肉が痛んでくるのが普通でした。

もちろん、ミッドソールの厚みが全然違いますから(ボストン8は前足部の地面からの距離がとても短く感じます。アスファルトをすぐそこに感じるような感覚。)、そのことが最大の要因だとは思いますが、それにしても足裏の「守られ感」は別格です。

このクッション性能を支えているのが、おそらくサロモンロードシューズ最大のウリ「Vibe」フォームであることは間違い無いでしょう。

先代よりも若干ハード寄りにシフトしましたが、それでも接地時の柔らかすぎず硬すぎない独特の感触は、このロードシューズを履きたくなる最大の要因です。

ところが、そんな優れたクッション性能を発揮するこのVibeフォームこそが「軽くない」走りを生み出しているのではないだろうかと、走りながら薄々感じていたのですね。

そうなんです。優れた衝撃吸収能力を発揮する代わりに、接地時のエネルギーを全て吸収してしまい(実際にはそう言うことはないのでしょうが)、前に進むための反発力を生み出すことができなくなっているのではないかと考えたのです。

さらに、このフォームが足裏全体を覆い、アーチの部分がフラットになっていることもある程度関係している気がしていて、蹴り出す際の足裏の「しなり」も生み出すことができないのではないかとも考えています(素材がもう少し硬ければ竹のようにしなりながら反発を得られるのでしょうが、なまじ柔らかいためにしなることができないのでは?)。

アーチ部が柔らかすぎて「しなれない」のも反発が得られない原因か?

何十年もかけて培われてきた「吸収」と「反発」を両立する技術

そう考えますと、普段何気なく履いているランニングシューズ(ランマニアの場合はアディダスですが)と言うのは、長い時間をかけても大変高度な技術が投じられてきたことがわかるのですね。

この「吸収」と「反発」という相反する現象を同時に両立させてしまう多くのランニングシューズの技術力の高さには目を見張るものがあるなと、今日は改めて感じたところです。

例えば、比較的歴史のあるアディダスの「Boostフォーム」について言えば、あんな発砲スチロールのような一見柔らかそうな衝撃吸収素材が、あれだけの反発力を生むのですから、冷静に考えれば「どうなってんの?」と思うわけです。

今回のVibeフォームは衝撃を吸収する力は大変高いものがあるとはいえ、十分な反発力を生むには至っていません。それだけそれらを両立させると言うことは高い技術が必要なのだと思うのですね。

また、アディダスを代表する「トルションシステム」も、さりげなく土踏まずの部分に謎の樹脂プレートが嵌め込まれているだけなのですが、実はあれによりアーチ部の反発力を生んでいたことに気づかされました。

あの部分が硬くないと靴は「しなれない」のです。

もちろん、その「しなる力」が強いがために足底筋膜炎とかの遠因にもなってしまうのですが、その反発力を利用して私たちはスピードに乗れていたのだなと、改めて感じた次第です。

靴に走らせてもらってきた私たち

一方、今日の練習では別の側面も見えてきました。

今回履いたRA PRO2は、はっきり言って、スピードを出して走ることに対してほとんど助けを得ることができませんでした。

軽量で走りやすいはずが、反発が得られないため全く軽く感じることもできませんでした。

しかし、走りながら、途中からあることを考えました。

これ、もしかしたらしっかりとした接地をして、体重を乗せ、自分の脚の前へ進ませるための筋肉をしっかり使って走らなければ速く走れないのかも、と。

これに気づいてから、これまでのように前足部でちょこっと接地をしてふくらはぎの力で前に持っていこうという走りをやめ、ある程度フラット気味に接地をして大腿部の力も十分使って走ったところ、驚くべきことにスムーズな推進力を得られるようになったのですね。

ここからキロ4を切って走ることができるようになりました。

そしてもう一つ気づいたことがありました。

私たち(というかランマニア)は、普段いかに靴の性能によって「走らせてもらっていた」かと言うこと。

ランマニア的には、普段から「厚底」は履かずに、ある程度自分の力で走っている「気に」なっていたところがあります。地面の衝撃をもろに受ける比較的そこの薄いシューズで強靭な走力を発揮できている、と。

しかし、今回のような「走らせてもらえない」靴を履いてみると、普段いかに靴の性能に頼っていたかに気づかされるのですね。

そう言う意味では、今回のような靴で練習をすることは楽ではないし非常に疲れるのですが、「自分の力で走る力を身につける」と言う意味ではとても有意義なシューズなのではないかと、最後は考えを改めて練習を終えたところです。

だからこそ、1点だけ、これだけは改善してほしい唯一にして最大の欠陥

そう思えて、もう今後Mペースでの距離走はこれでいいのではないかと思い始めていたところで、やはりどうしても許容しがたい走る上での最大の欠陥がこの靴にはあります。

「小指が痛い」

これは如何ともし難いとても大きな問題です。

今回の2世代目から、どのグレードも(MAXも無印もPROも)靴幅が若干細めになりました。そのため前作よりもフィット性能は大幅にアップしているのですが、相変わらずアッパー部分の硬い補強はそのままです。

靴の幅が細くても、多くのシューズでは小指が痛くなることはありません。それは素材が伸縮性に富んだ柔らかいものだからですね。

サロモンさんはトレイルシューズの歴史が長いせいか、このつま先周りの補強がとにかく「しっかりし過ぎて」いるのです。

今日は小指に血豆ができるほどのダメージがあり、流石にこれでは練習に使うことはできません。

残念ながら、次回の距離走ではボストン8に戻ることになるでしょう。

せっかくこの値段でここまでのシューズを作れるのですから、後はこの補強部分だけ改善してもらえたらもう言うことはありません(実はSONIC3では改善されていたりするのかもしれません。海外では4も発売されましたし。)。

とはいえ、ジョグのペースであればここまで痛むことはないので、今後もジョグを中心にこの靴を使用して、「自分で走る」力を培っていこうと考えています。

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